路地と緑のこども園

愛知県豊田市に建つ認定こども園の計画である。

敷地周辺はもともと鬱蒼とした雑木林で、敷地は周りに対して地面が低く谷地になっている形状であり、南側の敷地境界線に沿って隣に沢があるのが特徴であった。そのため、一般的な幼稚園等のように教室郡の並びから園庭にフラットに繋がるような計画ではなく、周辺のレベル差を活かした計画としたいと考えた。周辺からそそり立つようなボリュームではなく、森に寄り添うようなボリュームであって欲しいと考え、また内部空間からは外部の森へとつながる連続感を得ることが大事だと考えた。

こども園として要求されたのは0歳時から5歳児まで約200人もの園児が利用する比較的大きな規模の園だが、大きい故に各部屋で実際のアクティビティが分断されず全体の一体感を生み出すことが大事だと考えた。

この計画では、保育室同士をつなぐように路地を作り、そこをバッファーゾーンとして広く設けた。こども達にとっては格好の遊び場に、先生たちにとってはこどもを見守りやすい空間となって欲しいと考えた。また、この隙間の空間から森が見えるよう外側の面はすべて開口部とした。

園児の行動範囲を考えると、2階が3−5歳児のスペース1階が0−2歳児のスペースとしてフロアで分かれることになってしまうが、2階の各保育室の間に吹き抜けを散在させることで、保育室相互とその他の共用部とも一体感を生み出している。また各階の天井面がシームレスな面として連続することで、各部屋が離れていても部屋と部屋がバッファーゾーンを介してつながり、ひいては外の森へと視線が抜けるように計画した。

この園舎が視線や動線が部屋から共用部、周辺の緑と繋がることで、こども達の遊びや学びの場として開かれることができるのでは、と考えている。 (吉村昭範)