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作品「ポンチ絵」

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<展覧会「視覚のカイソウ」>

2019年11月23日から愛知県にある豊田市美術館で造形作家の岡崎乾二郎氏(1955 年~)の展覧会「視覚のカイソウ」が開かれています。彫刻、絵画、映像、メディア・アート、建築からテキスタイル作品、舞台美術、絵本など幅広いジャンルで最前線で活躍してきた作家・岡﨑乾二郎氏の大体的な個展です。1月13日にはトークイベントがあり、それに合わせて展覧会を観てきましたので、私的な感想をご紹介したいと思います。

 今回の展覧会は、作家の初期の立体作品から最新の絵画作品まで、A5サイズくらいの小さな平面作品から部屋のほとんどをしめてしまうような大きな立体作品まで多岐に渡る一連の作品群を観ることができます。展示構成として、豊田市美術館の内部を回廊に見立てることで、建築の骨格との相乗効果のある空間体験ができることも興味深いです。

私が特に印象に残ったのは、スケッチと立体が混在した物体が木の額縁の中に収まっている48枚の作品「ポンチ絵」です。この作品は、どこか子供が書いたようなスケッチと、その書いた紙がランダムにめくられています。めくられた背後にも異なるスケッチが書かれたりしていて、いろんな角度から立体的に見れる楽しさのある作品です。

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<トークイベント>

一方で、トークイベントは、精神科医でもあり批評家でもある斎藤環氏との対談形式で行 われました。まず冒頭から岡崎氏の愛ネコが「オハヨウ」と喋ることから始まり、喋る愛ネコとご自身との接し方、コミュニケーションの仕方が、いろんなことに示唆的なヒントがあることが次第に分かっていきます。猫という他者との間に言葉以外のコミュニケーションが成り立つという話にとどまらず、むしろ、自分たち人間自身が、「どんな立場の人が話しているか」や「語り手が過去にどんなことを話したか?」などのメタメッセージに頼ってコミュニケーションしていることを逆説的に思い知ります。このように、喋るネコを通じて「主体とは何か(何に規定されているか)」ということを掘り下げていく展開が、聞いていてとても痛快でした。美術史論というより、まさに哲学のようでした。

しかし 、この言葉以外のコミュニケーションで対象をどう読み解いていくかという視点は、特に現代美術のような美術作品を理解する上では、とても興味深い視点だと思いました。例えば、岡崎乾二郎氏の作品にも見られる傾向ですが、同じ形を反復することや、2枚組の絵画作品の中に、大きさこそ違うがまったく同じ要素が含まれていることに気づいたりすると、どんどん注意深く作品を鑑賞するようになり、いつのまにか塗料の厚みまで注意深く観るようになります、これは鑑賞者(私)自身が、言葉ではないものの中に没入している状態のではないかと思いました。

新作絵画「青い胡桃、酸っぱい花梨、吹き飛ばせ。私の口にもう水分はなく、私の舌は吹きかけられた言葉の暖かさで蝋燭のように溶けていました。そのあと六十五回も居眠りするあいだに、しとしとと頭蓋の上から下にむかって滴り落ちる雫で、はっきりと目が覚めたのです。どぅと霞が風で晴れ、日の光が射してきて、草からきらきら雫が落ち、すべて葉も茎も花も光と水に充ちた形を持っているものはみんな完全なる甘露でした。」

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<ジャンルを横断する>

 ところで、岡崎乾二郎氏は基本的に自身の作品を解説されないのですが、対談のなかで少しだけ作品を解説していた話があって、とても印象的でした。たくさんの色を使った油彩をランダムに配置した「新作絵画」について説明されていたのですが、その方法は印象派の流れを受けた点描画のように、一つ一つ独立した色彩の点を空間の中に可能性を含みながら配置することを終わることなく繰り返す試みであり、それ自体が完成したフレームではないと説明されていましたが、それを聞き、絵画もどこか建築にも通じる思考するのだなと感心しました。

カステルベッキオ美術館(ヴェローナ)

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例えば、イタリアの建築家カルロ・スカルパ(1906~1978年)が設計したカステルベッキオ美術館(ヴェローナ)など、と、連想し始めたらキリがなく様々なジャンルに広がっていく岡崎乾二郎氏の「視覚のカイソウ」展は、豊田市美術館で2020年2月24日まで、必見の展覧会です。

<展覧会情報>

展覧会名:視覚のカイソウ 
会場:豊田市美術館 
会期:2019年11月23日(土)-2020年2月24日(月) 
休館日:月曜日(祝日除く) 
開館時間:10:00-17:30(入場は17:00まで) 

公式HP https://www.museum.toyota.aichi.jp